遺産相続の確定申告、所得税は原則不要・相続税は原則必要
遺産を相続したけれど、確定申告をする必要があるかどうか悩んでいる方も多いと思います。
遺産を相続した場合には様々な手続きが必要となります。大きく分けて、遺産の名義変更に
関わる手続きと税金関係の手続きの2点となります。
この記事では、遺産を相続した場合にどういった税金関係の手続き(確定申告)が必要になる
のかを解説していきますので参考にしてください。
1.遺産相続した場合の確定申告、所得税は原則不要だが、相続税は原則必要
遺産相続した場合の確定申告
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所得税→原則不要
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相続税→原則必要
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遺産を相続した場合には、相続税の申告手続きを行わなければいけない可能性があります。
ただし、この相続税の申告手続きは遺産を相続した者全員が行う必要があるわけではありません。
簡単に説明すると、ある一定額以上の金額の財産がなければ相続税はかかりません。
このある一定額とは、基礎控除と呼ばれるもので、
3,000万円+600万円×相続人の人数
で計算することができます。相続人が1人の場合は、3,600万円以上の遺産がなければ
相続税の申告や納税を行う必要はありません。
また、遺産を相続すると、そのことでキャッシュ(お金)が手に入るので、それを収入だと
とらえると、その収入を所得税の確定申告で申告しなければいけないと勘違いされる方が
いますが、それは間違いです。
所得税の確定申告はその個人に属するフローの収入に関わるもので、相続のように何の対価も
なく他人からもらった場合には、また別の税金がかかります。それが、贈与税や相続税という
税金です。
つまり、遺産を相続した場合でも、原則、所得税の確定申告は不要です。
所得税の確定申告とは、毎年3月頃に税務署に対して行う税務上の手続きのことです。
但し、遺産相続と所得税の確定申告は、直接は関係しませんが、遺産相続をしたことにより
確定申告に通常とは違った手続きが生じる可能性があります。それらを次の1-1.から解説して
いきたいと思います。
1-1.収入を生む資産を相続した場合は所得税の確定申告を行う必要がある
賃貸アパートや駐車場といった不動産など、そのもの自体から収入を生む遺産を相続した
場合には、その受け取った収入に対して、所得税の確定申告を行う必要があります。
例えば、今まで父親が賃貸アパートを所有しており父親が確定申告をしていた場合に、
その父親が亡くなった場合。遺産である賃貸アパートを相続した相続人が、父親と代わって
今後の確定申告をしていく必要があります。
例えば、6月30日に亡くなった場合には、その年の1月1日から6月30日までに関わる収入は
父親の収入として、7月1日から12月31日までに関わる収入はその賃貸アパートを相続した
相続人に関わる収入として確定申告の手続きを行う必要があります。
なお、この亡くなった被相続人(父親)に関わる収入の確定申告のことを、準確定申告と言い、
死亡日から4か月以内に行う必要があります。相続人の確定申告は通常の確定申告と同様、
翌年の3月15日までに行えば大丈夫です。
ちなみに、被相続人の賃貸事業等を相続人が引き継ぐ場合にはいくつか必要な手続きがあります。
特に事業を承継した相続人が青色申告者になるためには書類の提出期限に気を付ける必要が
あります。
例えば、被相続人が生前青色申告を行っていた場合で、1~8月に相続が発生した場合は、
相続開始日から4か月以内が提出期限となります。
1-2.相続した土地等の不動産を売却した場合は所得税の確定申告が必要
相続した土地等の不動産や上場株式等の有価証券などを売却した場合には、相続とは関係ない
土地等を売却した場合と同様に所得税の確定申告が必要となります。ただ、その売却の際に
支払うこととなる税金を大幅に節税できる特例が適用できる可能性があります。
それは、“相続財産を譲渡した場合の取得費の特例”と呼ばれるものです。
相続した財産に、相続税が課税されている場合に、そのかかった相続税の一部を売却時に
かかる税金から差し引いてあげましょうという特例です。
土地等の者を売却した場合にかかる税金は、
{(売った金額)-(もともと買った金額)} ×税率
という計算式で計算しますが、このもともと買った金額、つまり取得費にさらにプラスして
相続税の一部を加算することができるというものです。加算できる相続税は以下の算式に
より求めることができます。計算式
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その者の相続税の課税価格の計算の
基礎とされたその譲渡した財産の価額 |
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その者の相続税額 |
× |
---------------------------------------------------------------------------- |
= |
取得費に加算する相続税額 |
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その者の相続税の課税価格 + |
その者の債務控除額 |
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・計算例
【前提条件】
Aさんは、相続で父から相続税評価5,000万円の土地と5,000万円の現金、合わせて1億円を
相続し、相続税を2,000万円支払いました。そして、相続した土地を5,000万円で売却しました。
相続した5,000万円の土地は先祖代々の土地で、もともといくらで買ったのかは不明です。
1)取得費に加算する相続税額
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5,000万円 |
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2,000万円 |
× |
---------------------------------------------------------------------------- |
= |
1,000万円 |
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1億円 |
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2)譲渡した際にかかる譲渡税の計算
{5,000万円(売った金額)-5,000万円×5%※-1,000万円(取得費加算額)}×20.315% =
約760万円
※
もともとかった金額が不明の場合には、売った金額の5%を概算取得費として計上します。
上記のような計算例となります。
1-3. 相続した財産を寄付した場合には所得税の確定申告が必要
相続した財産を寄付した場合にも、確定申告をすることで節税メリットを受けることができます。
相続した財産を寄付した場合には、寄付先等の要件に当てはまれば、相続税から一定額を控除
できる寄付金控除が適用となります。
さらに、この相続税に関する寄付金控除を適用したあとも、その相続人に関わる所得税からも
一定額を2重で控除することが可能です。
この寄付金控除を適用するためには、所得税の確定申告を行う必要がありますので注意が
必要です。
寄付をする先は、国や地方公共団体もしくはユニセフや赤十字等の特定公益増進法人等の
決められた寄付先でなければいけません。寄付の控除についてさらに詳しく知りたい方は、
以下のHPを参照ください。
2.所得税の確定申告の方法
所得税の確定申告をする方法を簡単にご紹介します。
主に以下の3つの方法があります。
・自分で税務署の相談窓口に行ってやる
毎年、確定申告の時期(2月頃)になると全国各地の税務署で確定申告の相談窓口が設けられ
ます。実際に赴く必要がありますが、資料等を持ち込んでその場で申告書作成のアドバイスを
もらいながら確定申告を行うことができます。
ただし、金額が大きなケースや複雑なケースは対応できかねるということで税理士への依頼を
勧められます。
・国税庁のHPで電子申告
以下のHPより、所得税の確定申告書を作成することができます。ただし、ある程度知識が
ないと一人で申告書を仕上げるのは困難だと思います。
・税理士に依頼する
税理士に依頼する方法もあり、一番手続きとしては手間がかかりません。
しかし、内容にもよりますが手数料がかかります。最も簡単なものでも5万円程度は
かかってしまうところがデメリットですが、手間がかからず安心で確実な方法であると思います。
収入の金額が大きかったり、また、忙しくて手続きを行う時間がなかなかとれない、
自分で作成する自信がない、といったような場合は迷わずに専門家である税理士に依頼される
ことをお勧めします。
3.まとめ
遺産相続をした場合には、まずは相続税申告を行う必要があるかどうかを確認する必要があり
ます。
次に、相続した遺産から収入が生じている場合や相続した遺産を売却したり寄付をしたりした
場合には所得税の確定申告をする必要がある旨を説明いたしました。
確定申告はご自身でされる方も多くいますが、相続が絡む確定申告は通常とは異なり難しい
ので初回だけは税理士に依頼されることをお勧めします。
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