相続税申告をする可能性がある人がまず初めに読むべきガイド
自分は相続税申告をする必要があるのかどうか?また、相続税申告をしなければいけない場合には、
いつまでに、どうやって行えば良いのかお困りではないでしょうか。
この記事では、初めての方のための相続税申告の基礎、そして流れ、実際に相続税申告を行う方法
までを詳細に解説します。親族が亡くなり、相続税申告をしなければいけない可能性があるかもと
感じておられる方はぜひ最後まで読んでいってください。
この記事を読むと、
自分には相続税申告を行う義務があるのか
相続税申告手続きの一連のスケジュール
相続税申告のために必要な書類の収集方法や添付資料
こういったことに関する知識を得ることができます。
1.相続税申告は遺産が3,600万円無ければしなくてもOK
基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税には、「基礎控除」といって、遺産総額がこの金額を超えなければ相続税申告の手続きは
一切何もしなくても良いというものが設定されています。
この基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で簡単に算出することができます。
法定相続人というのは、相続人と読み替えて頂いてもここでは支障ありません。
例えば、父が亡くなって相続人が母と長女、長男の3名の場合には、この基礎控除は
「3,000万円+600万円×3名=4,800万円」になります。
つまり、父の遺産総額が4,800万円を超えなければ相続税はかかりませんし、
相続税申告に関する一切の手続きをする必要はありませんので、この記事を読み進める必要は
ありません。
2.相続税申告の期限は死亡日から10カ月以内
相続税の申告期限は、相続開始(死亡日)から10カ月後の応答日となっています。
例えば、死亡日が1月1日なら11月1日、5月15日なら翌年の3月15日といった具合です。
申告期限までに、相続税申告書を管轄の税務署に提出し、かつ相続税の支払いまで行う必要が
あります。なお、その申告期限に1日でも遅れてしまうと、ペナルティがかかってきますので
注意が必要です。
相続税の申告期限は原則延長できませんが、遺留分の減殺請求があった場合や相続人の異動が
あった場合など特殊な場合には最大2カ月の延長が認められるケースもあります。
どうしても間に合いそうにない場合には、概算で申告期限内に“とりあえず”申告及び納付を
しておいて、後日、修正申告をするといった方法もあります。
3.相続税申告手続きの基本的な流れ
相続税申告手続きの基本的な流れは、以上の通りとなります。相続が開始(死亡)してから、
10カ月以内にすべての手続きを完了させる必要があるため、手続きに動き出すタイミングと
しては早ければ早いほど良いです。一般的には、49日の法要を終えられたタイミングで動き
出す方が多いです。
3-1.相続開始(死亡)から7日以内に死亡届を提出
相続開始(死亡)から7日以内に、役所に死亡届を提出する必要があります。
これについては、通常、病院や葬儀会社などから案内があると思いますので、それに従って
忘れずに提出しましょう。
なお、この死亡届を提出すると、その情報が自動的に役所から税務署にいくような仕組みに
なっています。
3-2.戸籍謄本を収集し相続人の特定を行う
亡くなった被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、法定相続人の特定を行います。
戸籍謄本を収集するまでもなく相続人は明確に分かっているというようなケースであっても、
今後の相続手続きにおいて戸籍謄本は必要になりますので、この手続きは行う必要があります。
相続手続きに必要な戸籍謄本の収集については、税理士などの専門家に依頼することもできますが、
さほど難しくはないためご自身でされている方が大半です。
3-3.相続人の承認
相続開始(死亡)から3か月以内に相続放棄や限定承認の手続きをとらなければ、単純承認をしたと
みなされます。
プラスの財産より借金が多く相続放棄をしたい場合には、3カ月以内に相続放棄の手続きを行う
必要があります。
3-4.所得税の準確定申告
相続税申告手続き自体の流れとは少し異なりますが、相続開始(死亡)から4カ月以内に所得税の
準確定申告を行う必要があります。
通常1月1日~12月31日までの間に生じた所得は翌年の3月15日までに確定申告を行う必要が
ありますが、年の途中で亡くなった人の場合には1月1日からその亡くなった日までの所得を、
亡くなった日から4カ月以内に申告する必要があります。これを所得税の準確定申告と言いますが、
そもそも生前に確定申告をされていなかった方についてはこの手続きは不要です。
3-5.相続財産の評価及び財産目録の作成
相続税の計算を行うためには、まず遺産の総額が相続税の計算上いくらあるのかを算出する
必要があります。現金100万円であれば、相続税評価は100万円となりますが、例えば土地や建物の
不動産などについては個別に相続税評価を行う必要があります。
土地については“路線価”、建物については“固定資産税評価額”によって相続税評価を
行いますが、この作業は簡単ではありません。相続税申告を初めて経験する方が、相続財産の
評価を行うことは非常に難しいと言えるでしょう。
そして、各遺産の相続税評価を反映したらそれをもとに相続財産目録を作成しましょう。
3-6.遺産分割協議書の作成
相続財産の評価が終わり財産目録まで完成したら、次はそれに基づいてどの財産をどの相続人が
取得するのかを話し合う必要があります。これを遺産分割協議といい、その遺産分割協議の結果を
遺産分割協議書という書面に表します。
3-7.相続税申告書の提出と相続税の納付
相続財産の評価が終わり、財産目録が完成し、遺産分割協議が成立したら、相続税申告書を作成し
税務署に提出します。相続税申告書の提出と同時期に相続税の納付も行います。
この相続税申告書の提出と納付を相続開始より10カ月以内に完了させる必要があります。
なお、相続税申告書の作成方法についてはこの後の章で詳しく解説を致します。
3-8.相続財産の名義変更手続き
相続税の申告と納税が終われば、次に相続財産の名義変更を行いましょう。
預貯金や証券口座などについては、自分で金融機関に赴くことで比較的簡単に手続きができますが、
土地や建物等の不動産については自身で行うには少しハードルが高くなります。
不動産の名義変更は相続登記と言いますが、この手続きについては大半の方は、
専門家である司法書士に依頼しています。
4.相続税申告手続きのための必要書類
相続税申告手続きを行うための必要書類には様々なものがあります。
例えば、身分関係を確定させるための戸籍謄本関係の書類、相続財産を評価するために必要な
財産の種類に応じた各種資料、債務控除を行うための領収書などがそれにあたります。
5.相続税申告書の書き方
相続税申告書は、第1表から15表までがありますが、そのうち一般的に使うものは以下の通りと
なります。
第1表:相続人個人ごとの情報と税額を計算
第2表:相続税の総額を計算
第9表:死亡保険金の明細
第11表:相続財産の明細
第13表:債務・葬式費用の明細
第15表:相続財産の種類ごとの明細
記載の順序としては、第9表、11表、13表を作成し、次にその情報をもとに第2表及び第15表を
作成し、最後に第1表を作成します。
ただ、これらの相続税申告書を手書きで作成すると転記ミスが起こったり、1か所訂正すると
それに連動した複数個所を訂正する手間がかかったりしてしまいますので、あまりお勧めできません。
会計事務所であれば、専用の税務申告ソフトを使用して作成しますが、一般の方ではそのような
パソコンソフトは所有されていないでしょう。ただ、一般の方でも、ものによっては無料で利用
できたり、数万円程度で購入できるソフトもありますので、利用を検討されてみてはいかが
でしょうか。
6.相続税申告書への添付資料
相続税申告書を税務署に提出する際には、様々な添付資料が必要となります。
例えば、小規模宅地の特例を適用して相続税申告を行う場合には要件にあった添付資料を
添付して申告を行わないと特例の適用が受けられずに税額が上がってしまうばかりかペナルティを
請求される可能性もあります。
7.相続税申告は9割の方が専門家(税理士)に依頼しているという事実
ここまで相続税申告のやり方や流れについてご説明してきましたが、実は相続税申告については
約90%の人は専門家である税理士に依頼をしています。
当然、専門家に依頼すると報酬として費用がかかってしまいますが、その分支払う相続税の節税が
できたり、間違うことによって余分なペナルティを取られるリスクがなくなります。
8.まとめ
相続税申告について、解説をしてきました。
相続税申告の手続きをこれからやらなければならない方にお読みいただいていると思います。
相続税申告に関する手続きはとても骨の折れる作業で、かつ専門的なノウハウや知識が必要に
なります。
ある程度の規模になれば、計算する税理士が100人いれば100通りの税額が出るとも言われています。
相続税申告を依頼する税理士選びは非常に重要ですので、ぜひ慎重に選んで頂ければと思います。
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